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感想・書評「きみを夢みて:スティーヴ・エリクソン著:越川芳明訳」ネタバレ注意・アメリカで初の黒人大統領が当選したニュースを家族で見る場面から物語は始まる(レビュー)。 #読書


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きみを夢みて スティーヴ・エリクソン著 越川芳明訳

作家ザンは妻のヴィヴと十二歳の息子パーカー、四歳の娘シバと、ロサンゼルスの街はずれに住んでいる。シバはエチオピアから養子としてもらい受けてきた子ども。アメリカで初の黒人大統領が当選したニュースを家族で見る場面から物語は始まる。
最初数ページで「うっ、政治の話か…」と尻込みしてしまった私。でももう少し読んでみようと進んでいくと、アメリカにおける白人・黒人の見られ方や、さまざまな人種による音楽の話題など興味深い内容が出てきて、一気に読み終えた。
ひょんなことからヴィヴは、シバの本当の母親かもしれない人物を知っている知り合いからメールを受け取る。その言葉を信じて、ヴィヴはシバの母親探しにエチオピアまで出かけることとなる。残されたザンは新しい仕事を引き受けるために、パーカー、シバを連れてイギリスに旅立つ。
イギリスでモリーという不思議な子守り(奇しくも彼女は黒人だった)と出会ったことで、事態は大きく変化する。私が一番面白いと感じたのは、同じ黒人であるシバとモリーの体からラジオのように音楽が聞こえてくる、という描写によって、彼女たちの体に流れるアフリカの血を表している部分だ。この小説ではさまざまな文化の差やそれによって生じている問題など、日本人にとってはあまりなじみのない、人種をめぐってアメリカの抱える問題が浮き彫りになっている。しかしなじみがないといってもまったく理解できないということがなく、この物語を読んでいくと、自分の知らなかったそのようなテーマが、海外ニュースや教科書を読むよりもしっかりと実感できた。

ありがとう寄稿。

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