世界から猫が消えたなら 川村元気 大切なものに気付かせてくれる本です。
主人公の僕は猫とふたり暮らしの30歳。
ある日突然、脳腫瘍で余命宣告を受け、さらには自分のことを悪魔だと名乗る男から、余命は一日だと告げられます。
絶望にうちひしがれる僕に、悪魔は「この世界から何かを消すたびに一日命をのばす」と取引を持ち掛け、生きるために僕が世界からものを消していくお話しです。
余命宣告された主人公ということで、暗いお話しなのかなという印象でしたが、読んでみるとそんなことは全くなかったです。
主人公も言ってますが、突然「明日死にます」と言われても、実際はピンとこず、冷静になってしまうものなんでしょう。
悪魔にいたっては常に能天気なので、この暗くなるはずの状況をぶち壊して明るくしてくれています。
ですが、「猫を消しましょう」と言い出したときは、やっぱりこいつは正真正銘の悪魔だ…と改めて気づかされました。
私は猫を飼っているので、主人公には余計に感情移入してしまいました。
自分が生きる為にこの子を消すなんて、考えられません。
お話の中で猫のキャベツが自分を消してくれと言う所、主人公がキャベツを探し回る所は涙が止まりませんでした。
胸が痛くなる部分もありましたが、読み終わった後は心が温まる素敵なお話しでした。
自分にとって大切なものと他人にとって大切なものは違うけれど、どれもなくてはならないものなんだと気付かせてくれる本でした。