感想・書評「プラージュ：誉田哲也」ネタバレ注意・薬物に手を染めてしまったばかりに仕事を失った主人公の吉村貴生（レビュー）。 #読書

「プラージュ」　誉田哲也（ほんだてつや）・著

たった一度魔が差して薬物に手を染めてしまったばかりに仕事を失った主人公の吉村貴生。さらに住んでいたアパートが火事になって焼け出され、住む場所も失ってしまいます。途方に暮れた貴生が保護司の紹介でやってきたのは、プラージュというシェアハウスでした。元受刑者の社会復帰を支援する目的で潤子が切り盛りしているプラージュは、各居室にドアがなく廊下との仕切りもカーテンのみ。

そこで暮らす個性豊かな住民たちに驚きながらも、貴生は人生をやり直す決意をします。同時進行で、未解決事件を追う記者の視点も語られていきます。章が変わるごとに別の登場人物の視点に切り替わる手法は、私はとても好きで引き込まれます。読解力のある読者なら予測できた結末かもしれませんが、私は推理などはせずに淡々と読み進めていったので、ラストの展開にはとても驚愕しました。貴生の人生よりも、記者である野口彰こと早見陽一の人生の方に強く胸をえぐられました。救いのある終わり方だったのはよかったです。