Nのために(湊かなえ) 一体誰が犯人なのか、Nとは誰なのか、一気に読みたくなる本
文庫本で318ページほどではありますが、本当に一気に読んでしまいました。とある夫婦が殺されている、そのシーンから話は始まります。その殺人事件に絡むのは、名前の頭文字が全員「N」で始まる男女四人。彼ら一人一人の視点で、同じ状況が描かれているため、実はあのNはこんなことを考えていた、こっちのNは実はこんな状況であったというのが、読み進めていくうちに分かっていきます。
どのNが、どのNのために、何を考えて、そのような行動に出たのか、そこは最後の最後に分かりますが、そこまでたどり着くのに、次が気になって気になって、何も手につかなくなります。ただのサスペンスかと思って読み始めましたが、そんな単純なものではありませんでした。人間の「愛」の形がこれほどまでに、さまざまであること。純粋な愛の描写ももちろんありますがそれだけでなく、狂気的な愛がこれほどまでに深く、そして恐ろしいものであるということ。人間の心のあたたかさ、残酷さ、そして切なさといった様々な感情がこれでもかと詰まった作品のように感じました。時間が経ったら、また読み直したい、そんな作品です。